東京高等裁判所 昭和54年(ネ)753号 判決
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【判旨】
一控訴人佐藤が昭和四五年三月被控訴人からその所有の本件土地上に存するその所有の旧建物を居宅として使用する目的で賃料一か月一万円期間の定めなく賃借したことは争いがない(旧建物の構造床面積位置等が控訴人ら主張のとおりであることについて被控訴人は明らかに争わないから、自白したものとみなす)。
二控訴人佐藤がこれとともに旧建物の奥すなわちその西北に接続する空地を使用するのに関し、被控訴人の承諾を得たとの点につき、控訴人佐藤尋問の結果(原審及び当審)は、証人金宗徹の証言、被控訴人尋問の結果(原審)に徴し採用できず、その他右事実を認めるに足りる証拠はない。
三<証拠>によると、次の事実が認められ、これと異る右控訴人尋問の結果は採用しない。
控訴人佐藤は昭和四八年八月被控訴人の予じめの承諾を得て、泉平に請負わせ費用若干を投じて旧建物中南側部分と西側部分を一部撤去し、その他の部分に基礎をうち、屋根と北側の土壁以外をとりかえて「うな千」という屋号による飲食店(うなぎ屋)用の店舗(第一建物)とした。その位置は原判決別紙一、二のとおりであり、内部の間取は同三のとおりである。
控訴人佐藤は被控訴人に対して、第一建物の所有権は被控訴人に存することを承認し、その日付を当初の賃借時にさかのぼらせた承諾書(甲第二号証)を差し入れた。
控訴人佐藤は右改造と同時に、旧建物一部撤去により広くなつた北西隅の空地に土をいれて駐車場とし、同じく旧建物一部撤去により生じた右駐車場から公道に通じる空地を駐車場に至る通路として、それぞれ使用したほか、同年一〇月頃右駐車場の北隅に「うな千」の板前用住居として第二建物(トタン葺バラック)を建築した。
右駐車場等造成及び第二建物建築はいずれも被控訴人に無断でなされたものであつて、被控訴人は当時控訴人佐藤に工事中止を申し入れたが無視された。被控訴人は第一建物の隣家に住んでいるが、母の看病で忙しく、それ以上重ねての異議を述べなかつた。
四控訴人佐藤及び被控訴人尋問の結果(いずれも原審及び当審)によると、控訴人佐藤はその後被控訴人に無断で右駐車場の北西部分に第二建物に接続して温室を作つたこと、控訴人佐藤は昭和五〇年七月頃被控訴人に無断で右駐車場に子供用プールを作るべく、人夫とブルドーザーとを右駐車場にいれて作業させたところ、被控訴人から異議を述べられて中止し、さらに同年末から一年余浜野某の車を右駐車場に駐車させて被控訴人から抗議を受けたことが認められる(駐車の事実は争いがない。)。
五控訴人佐藤尋問の結果(当審)により昭和五四年六月七日第一建物を撮影した写真と認められる乙第六号証の一、第八号証の一ないし七(被写体は争いがない。)控訴人佐藤尋問の結果(原審及び当審)、弁論の全趣旨を併せれば、控訴人佐藤は旧建物改造後営んできた「うな千」飲食店を和風スナックに改めるべく、昭和五一年九月一九日頃被控訴人に無断で第一建物の看板を「和風スナック りら」と書きかえ、内部の四畳間と七畳半間との間にはめ込み仕切り壁をいれ、これに取外し自在の丸竹とすだれとを取りつけ、壁にベニヤ板をうちつけるとの改装工事にとりかかつたところ、同月二〇日被控訴人から中止を求められたにもかかわらず、工事を続行完成させたことが明らかであつて、右認定を左右すべき証拠はない(右のうち屋号変更は争いがない)。
六<証拠>によると、控訴人佐藤は第一建物附近に居住していたが、石岡市で「浜ふじ」という屋号の飲食店を経営している関係上、第一建物改装後は妻の弟に当たる控訴人塚本に第二建物を貸して居住させ、控訴人塚本をして第一建物を占有使用して右和風スナック りらの営業をさせたが、被控訴人に対する賃借人名義、料理飲食税の納税者名義、石岡保健所への営業主名義はいずれも控訴人佐藤のままとしていたこと、被控訴人塚本は昭和五二年六月頃傷害罪で逮捕され引きつづき身柄を拘束されているので、控訴人佐藤はその留守中自分の妻及び雇人内母クニ子を使用して営業を続けているが、控訴人塚本が釈放されれば、同人に従前通り営業させる予定でいることが認められる(控訴人塚本を第二建物に居住させていることは争いがない。)。この事実関係のもとでは控訴人塚本が身柄を拘束されたからとて、右各建物に対する占有を失つたとはいえない。以上の認定と異る控訴人佐藤尋問の結果は採用しない。
七控訴人(原審及び当審)被控訴人(当審)を各尋問の結果によると、控訴人塚本は、営業中、付近は午後一〇時頃には静かになる地区であるにもかかわらず、所定営業時間をこえて午前二時頃までカラオケをかけて大騒ぎするなど、近隣に迷惑を及ぼしたこと、被控訴人は第一建物賃貸人として近所の者から苦情を受けたが、控訴人塚本に暴力事件による前科があるため、被控訴人はこれに抗議できなかつたことが認められ、控訴人佐藤尋問の結果(原審及び当審)は採用しない。
八被控訴人が、控訴人佐藤の右第一建物無断改装、控訴人塚本への第一建物無断転貸、無断駐車場使用等を理由に控、訴人佐藤に対し、本訴状をもつて本件賃貸借契約解除の意思表示を行い、右訴状が昭和五一年一一月二五日控訴人佐藤に送達されたことは記録上明らかである。
九控訴人佐藤のした前項に掲げる行為のなかには無断改装などそれ自体信頼関係を著しく破壊するとはいい難いものも存在するが、無断転貸駐車場使用等と、その他の補助的事実と併せ考えると、控訴人佐藤の行為は本件賃貸借契約における信頼関係を著しく破壊し、無催告解除の原因となるというべきである。
(鰍澤健三 沖野威 奥村長生)